地球温暖化は、世界規模の大問題です。イギリスは、マーガレット・サッチャーが現役の政治家の頃から、環境問題に熱心に取り組んでいました。今回は、温暖化への対策としてロンドン市が導入した渋滞税とゴミ問題を取り上げてみましょう。
2003年に私が2度目のロンドンでの生活を始めたときに、ロンドン市の渋滞税(Congestion Charge)という制度が始まりました。
渋滞税とは、ロンドン市の中心部に車で行く場合に1日に支払う税金のことです。2003年当時は1日5ポンド(約1000円)でした。税金を支払った1日の間は何度でもロンドンの中心部に入ることが可能です。ただし翌日になれば、またその日の1日分の税金を支払わなければなりません。この税金の支払いを怠ると、罰金が科せられます。
渋滞税導入の背景には、税金の名前の通り、ロンドン中心部での車の渋滞問題がありました。渋滞税導入以前には、中心部への通勤や買い物などに車が使われることが多かったのが、導入後は、車ではなくバスや地下鉄など公共の交通機関の利用が増えたようです
ただし、空気を汚さない電気自動車は渋滞税の対象外で、電気自動車の場合は、渋滞税を支払わずにロンドンのどこにでも行くことができます。
ロンドン市は、税金まで導入し車の問題を大きく取り扱っていますが、ゴミ回収についてはまだまだ遅れています。日本では、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミなど細かく分別し、ゴミの種類に応じた回収がされていますが、ロンドンではそのような分類はしません。
各家庭には大きな黒いゴミ箱が配置されています。週に一度ゴミ回収車が回ってきますが、その際ゴミ箱を玄関前の道路に出しておけば、ゴミ回収の人たちが1軒1軒の家をまわってゴミを集めていってくれます。そのゴミ箱には、燃えるゴミでも燃えないゴミでも分別することなくすべてまとめて捨ててよいのです。
ただ雑誌や新聞などの古紙だけには、別の回収用ゴミ箱が用意されています。つまり、古紙と一般のゴミは分別しますが、日本のように細かい分別はしません。日本人の主婦が夫の仕事で渡英し生活を始めたとき、まず知りたかった英語が「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」だったときいたことがありますが、それは日本と同じゴミ処理法を想定したためであり、ロンドンでは必要のないことなのです。
ロンドンは車の問題には熱心ですが、ゴミ問題については日本に比べ消極的です。しかし、いずれロンドンでも日本のようなゴミの分別が始まるのでしょうか。
小森由里