子育てをした方は、「公園デビュー」の体験があることでしょう。 子どもが外遊びできるぐらいに成長した頃、近くの公園に連れて行って、公園で遊ぶ子どもたちの仲間入りをすることです。
「公園デビュー」は、子どもが単に外遊びを始めるというだけではなく、社会との接触をもつ貴重な機会になります。
しかしイギリスには、このような「公園デビュー」はありません。子どもを連れて公園に行くことはありますが、 日本のように「ほとんど毎日定期的に同じ公園に行って同じ仲間と遊ぶ」といった慣習がないのです。理由はいろいろ考えられます。 日本に比べてイギリスは年中寒く、特に秋から冬にかけて日照時間が短いという気候の問題が要因の1つにあげられます。
またイギリス人は、子どもをもつと庭付きの家に引っ越すことが多く、わざわざ公園にでかけなくても自宅で外遊びができるということ もあるでしょう。 治安の問題もあります。知人の日本人が日本の「公園デビュー」と同じ感覚で公園に出かけたところ、 ドラッグをやっている男と遭遇したということです。
園での外遊びの代わりに、イギリスでは「プレイ・グループ」というものがあります。
これは、教会などの室内で、幼稚園に行く年齢に達していない子どもが親と集まって、何かしらの遊びを一緒にするグループのことです。
プレイ・グループでは、1回につき3ポンドから5ポンド(約600円から1000円)の費用がかかります。
私と息子は「タンブル・トッツ」と「ミュージカル・ミニ」という2つのプレイ・グループにそれぞれ週に一度通っていました。
「タンブル・トッツ」は、主に体を動かすことを目的としたプレイ・グループで、教会の中の広間を利用して、 平均台やマットなど子どもの運動のための機具が 備え付けられ、音楽に合わせて、そこを歩いたり転がったりと1時間程度運動しました。 「ミュージカル・ミニ」は、その名の通り音楽が目的で、NHKの番組「お母 さんといっしょ」に登場する「お姉さん」のような歌の先生に合わせて、歌ったり踊ったり楽器に触れたりしました。
当時、息子だけではなく、子育てで家に居ることが多かった私には、2つのプレイ・グループは社会と接触する場であり、 毎週とても楽しみにしていました。特に「ミュージカル・ミニ」では、英語の勉強はしていても、 全く知らなかった英語の童謡に触れることができ、とても興味深い経験になりました。
小森由里