みなさんは、配偶者である夫の母親を人に紹介する際、母親を何と呼びますか。「ハハです。」「夫のハハです。」などでしょうか。「シュウトメ」という言葉は使わないでしょうか。
同じ状況で、英語ではどうなるのでしょう。前回に引き続き、今回も家族の呼び方、特に、配偶者の家族のような血縁関係にはない家族に対する呼び方を取り上げます。
夫の母親を指すことばとして日本語には「シュウトメ」がありますが、夫の母親を前にして、「シュウトメ」ということばを使うのには抵抗があるのではないでしょうか。実の母親も夫の母親もあまり区別せず、どちらも「ハハ」と呼ぶような人もいるかもしれませんね。一方、英語では実の母親と配偶者の母親とははっきり区別して表現します。実の母親は ‘mother’、配偶者の母親は ‘mother-in-law’ です。実の母親とおなじぐらい夫の母親とも仲が良くても、やはり夫の母親は ‘mother-in-law’ です。
‘in-laws’は通常複数形で用いられ、婚姻によってできた親族、つまり姻族を意味します。 ‘in-law’にハイフン ‘-’を付け加えた ‘-in-law’は ‘mother’ だけではなく他の親族語にも後続し、さまざまな姻族を表すことができます。 ‘father-in-law’は夫の父、 ‘sister-in-law’は夫の妹というわけです。このように、英語では血族と姻族をはっきりと区別します。
イギリスの離婚率、再婚率は日本よりも高く、再婚することによってその家族も増えることになります。再婚同士の場合には、お互いに子どもを連れて結婚する可能性もあり、そのような場合には、子供同士は血縁ではないものの義理の兄弟姉妹になります。このような子どもを ‘stepsister(義理の姉/妹)’ ‘stepbrother(義理の兄/弟)’と呼びます。 ‘in-law’とは別に、‘step-’は親または配偶者の再婚によって生じた家族関係を表します。
日本語で「姑」「継母」というと、単に夫の母親、父親の再婚相手というだけではなく、「冷たく意地悪な人物」という意味が含まれているとも考えられますが、 ‘mother-in-law’ ‘stepmother’にはそのようなニュアンスはありません。ただ単に家族関係をはっきりと示しているだけです。日本語とは違い、否定的な意味合いが感じられないこともあって、英語では ‘-in-law’ ‘step-’が臆することなく使われるのかもしれません。
小森由里