「社会階級」シリーズも【5】となりました。前回は、イギリス社会の中流階級と労働者階級の違いを、住居という観点から取り上げましたが、今回は、それぞれの階級の日常生活に踏み込んでみたいと思います。
新聞は、私たちの生活の大切な情報源ですが、購読する新聞にも階級差がみられます。イギリスの新聞は、quality paper(高級紙)とpopular press(大衆紙)に大別されます。Quality paperとしてはThe Times, The Guardian, The Independentがあげられ、popular pressの代表はThe Sunです。二種類の新聞のうち、中流階級はquality paperを、労働者階級の人たちはpopular pressを好む傾向がみられます。
さまざまな英語の勉強のためにと、私も1度The Sunを読んだことがあります。もう10年以上前のことで詳細は忘れましたが、とても英語が難しく内容が理解しにくかったことを覚えています。「英語が難しい」というのは、複雑な構文や表現を用いた英語というのではなく、「馴染みのない英語」だったためです。日本の学校教育の英語は、The Timesのようなquality paperで用いられるスタンダードな英語ですから、私のように典型的な日本の英語教育を受けてきた者にとっては、労働者階級の英語が色濃く表れているThe Sunは読みづらくなるのです。
2つの階級差は、新聞だけではなく、食べ物や食料を購入するスーパーマーケットにも及びます。以前、中流階級の人々がかかる病気と労働者階級の人々の病気は違っているという調査結果が新聞で報じられていました。病気の違いは、食べ物が異なるということが原因だったと記憶しています。つまり、階級によって食べ物の種類も違ってくるということなのです。
また、その食べ物を購入するスーパーも違っています。ロンドンには、大きなスーパーのチェーン店が数種類ありますが、その筆頭にMarks&Spencerがあります。ここで買い物をするイギリス人というのは、典型的な中流階級といえるでしょう。店内もきれいに整頓され、店員の教育も行き届き、商品も高品質ですが、値段もなかなかです。
このように、日常生活の中で中流階級と労働者階級との違いが認められます。次回は、労働者階級の英語に着目したいと思います。
小森由里