前回の「社会階級【2】」では、イギリス社会の主な3つの階級である上流(upper class)、中流(middle class)、労働者階級(working class)の中で、「上流階級」に言及しましたが、今回は「中流階級」と「労働者階級」を取り上げてみましょう。
王室や貴族に限定される「上流階級」とは違って、「中流階級」と「労働者階級」は幅広い一般庶民から構成されています。これら2つの階級が何によって分けられるのかその基準を明示するのは難しいということは、「社会階級【1】」ですでに述べたとおりですが、一つの目安として職業があげられるでしょう。極論ですが、「中流階級」と「労働者階級」には、ホワイト・カラーとブルーカラー違いがあると単純化できるかもしれません。
「中流階級」の中でも、特に上層中流(upper-middle class)というのは、官僚、医者、弁護士、会社の上層部など社会の中心的勢力で、高等教育を受け専門的な仕事についている人たちです。私たちが日本社会の中で考える「上流」と同じような階級と捉えてよいでしょう。一方「労働者階級」というと、‘plumber’と呼ばれる人たちに代表されるような印象を私は個人的にもっています。‘plumber’は「配管工」と訳されていますが、台所の流し、洗面台、風呂場などの給排水工事や電気関係の修理など家の中の故障やトラブルを何でも修繕してくれる職人を指します。
このように捉えると、支配者、指導者として「中流階級」が存在し、「労働者階級」はその指示によって労働する者というような上下関係が2つの階級間にあると思うかもしれませんが、必ずしもイギリス社会ではそうは言い切れません。勿論、上層中流の人たちは、自分たちが社会の中枢を担っているという自負があるかもしれませんが、労働者層も同様に、自分たちの仕事に誇りをもって現状に満足している人たちが多いようです。これが、イギリスの社会階級がアメリカのそれと比べて流動性が低い要因の1つではないかと思われます。
小森由里